女性ホルモンの減少にホルモン補充治療
女性の場合、30代頃から女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が徐々に減っていきます。そして閉経(一般的に50歳前後)を境に急激に減少します。
この変化に身体や心が十分に対応できないことがままあります。冷え症、火照り、多汗、頭痛などの症状が現れ、身体と心に不調をきたします。ひどいものになると日常生活に支障をきたすようになり、更年期障害と診断されることもあります。
これらのもっとも大きな原因となっているのは、急激な女性ホルモンの減少です。そういったときに、必要最低限のホルモンを外から補充し、さまざまな症状を防ぎ、閉経後のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を維持するのが「ホルモン補充治療」です。
具体的な治療内容
この治療の目的は、むやみに女性ホルモンの量を増やすのではなく、急激に減少した量に対して、必要最低限の補充で症状を抑えることです。
具体的には、エストロゲンとプロゲステロンを併用し補充していきます。飲み薬の服用、パッチ剤(皮膚に貼るタイプ)の使用、ゲル剤の塗布など、さまざまな補充方法がございます。
ホルモン補充療法に抵抗のある…という方へ
日本は、ピルの使用率にも見られる通り、特に女性の生理に関する症状を人為的に抑えることに抵抗があるようですが、欧米では約半数の女性が、ホルモン補充治療を受けています。もちろん、欧米が何から何まで正しいというわけではありませんが、ホルモン補充治療により閉経後の心身の健康の安定を保つことは、現代の長寿社会において、少なくとも選択肢の1つとしてあるべきだと当院は考えております。
更年期障害にお悩みの方、あるいは更年期障害かもしれないと感じていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談いただき、ホルモン補充治療が患者様の身体にどのような働きかけをしてくれるかをご説明し、アドバイスさせて頂きます。
ホルモン補充治療の効果は?
更年期障害と言われる、閉経の前後の症状を緩和します。
特に、冷え症、火照り、発汗、動悸・息切れ、多汗などに対する高い効果を示します。また、皮膚の痒み、おりものの異常などの改善も期待できます。多くの方が、1週間から1か月の治療の継続で、これらの効果を実感されています。
ただし、同じ更年期障害であっても、主に心因性にもの、たとえば不眠やイライラなどに対しては、別の治療法(漢方療法・心療内科的治療)を並行して行う必要があります。
ホルモン補充治療の副作用はあるの?
ホルモン補充治療を躊躇う患者様の多くが、その副作用を心配されます。
近藤産婦人科医院では、患者様のお身体の状態、症状の現れ方により補充方法の選択、補充量の調節を行い、副作用のリスクを最小限に抑えたホルモン補充治療を行っております。ご不安なこと、ご不明点がございましたら、お気軽にお尋ねください。
一般的に、ホルモン補充療法では、以下のような副作用が懸念されています。
子宮がん
エストロゲンは子宮内膜を増殖させますが、そのときに子宮がんの細胞も増殖させてしまう可能性があります。
ただし、エストロゲンだけでなく、プロゲステロンを同時に投与することで、このリスクは消失すると言われています。
乳がん
ホルモン補充療法を5年以上継続すると、乳がんの発症率が3割増すと言われています。
長期治療は望ましくありません。ホルモン補充療法が躊躇われる、もっとも大きな理由と言えます。
心筋梗塞
高齢になってからのホルモン補充は、心筋梗塞のリスクが高くなると言われています。閉経前後や50代のうちに開始すれば、ほとんど心配する必要はありません。
脳梗塞・脳出血
投与するエストロゲンの量が多すぎると、脳梗塞や脳出血のリスクが高まります。
当院では、医師が十分に確認した上で、適切な量(必要最低限の量)を投与しておりますので、ご安心いただければと思います。
ホルモン補充治療が受けられない方
ホルモン補充治療は、どなたでも受けられるものではありません。
以下の項目に当てはまる方は、ホルモン補充治療を行えません。
- 乳がんを治療中の方。または乳がんの経験のある方。
- 子宮体がんの治療中の方。
- 心筋梗塞と診断されたことのある方。
- 脳梗塞の経験のある方。
- 静脈血栓症や静脈瘤のある方。
- 妊娠している方。
- その他、重度の肝機能障害のある方、原因不明の不正出血のある方。